Vol.7 株式会社ツルタ電機
株式会社ツルタ電機
https://www.facebook.com/tsurutadenki/
- 社員の特徴を表すキーワード:家庭が1番、仕事が2番。助け合う。
- 会社のビジョンを表すキーワード:地域から選ばれる会社、女性活躍、家庭が1番
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:世の中の仕組みに対する洞察、論理的分析、プレゼン力
代表取締役 鶴田 賢一郎 氏
プロフィール
近畿大学 商経学部 卒業。大手電機メーカーへ就職し半導体の営業マンとして活躍後退職、半導体商社ツルタ電機を独立開業する。携帯電話製造、携帯電話販売代理業、自動車部品の検品業などの事業を展開する。上場企業との取引も多数。現在、黒にんにく「なでしこの生黒にんにく」の製造会社、 食品添加物の加工会社を創業し代表を兼務している。
ツルタ電機は、主にプラスチック製品の成型やメッキ加工、製品の検品検査を得意とし、様々な取引先に加工製品を納品している。その一つである車の内装部品は、世界から高い信頼が寄せられドイツやイギリスなどの高級車に採用されている。社長である鶴田さんの視野は製造業の範疇に収まらない。八面六臂の活躍の背景にある人生観、仕事観まで踏み込んで話を伺った。
─ 主力の製品・サービスについて教えてください
メッキ加工と製品検査については国内随一と評価されています。
弊社の得意分野の一つに、プラスチック製品の検品加工、メッキ加工があります。大阪にはバナソニックやシャープといった大手家電メーカーがあります。北河内と呼ばれる地域には、そうした家電メーカーの下請け企業がたくたんある地域です。弊社も、メーカーの下請け企業として、携帯電話で使われるプラスチックの外装部品を手がけていました。手のひらの上で扱われるという製品特性上、高い精度と品質が求められる仕事でした。今の技術力があるのはそうした経緯からです。当時の従業員規模は数百人に及びます。その取引先メーカーがなくなった時には、60億円以上の年商が、一気に0になるような危機的状況になりました。
会社は変わらなければいけない。そう一念発起して会社の体質を大きく変えるきっかけにもなりました。中長期的に事業を安定的に運営するためにはどうしたら良いのか。目をつけたのが、海外の高級車の内装部品でした。国産車に比較して外国車はモデルチェンジのサイクルが長いので、生産計画や販売計画が立てやすく安定的な事業運営が可能になります。今現在は、ドイツのベンツやBMW、イギリスのジャガーやベントレー、アメリカのフォード、国内ではレクサスの内装部品に弊社の製品が採用されています。車の内装部品は、携帯電話にくらべ目との距離があるため、求められる製品の品質基準を軽々クリアできていたことが強みでした。プラスチックのメッキ加工品の品質、検査体制については国内随一だと評価されています。
─ 会社には大きな変革が求められたのですね
取引先がなくなった。今までの仕事の仕方は通用しなくなった。
当時は私35才、社員に対して「取引先がなくなりました。今までの仕事の仕方は通用しなくなりました。変わらなければいけません。」と説明し、仕事の仕方の大改革を行いました。その結果、以前の正規社員十数名が今は1人です。現在はほとんど女性ばかりですが、パート従業員が35名程度、シニアの従業員が15名程度、全員で50名程で仕事を行っています。私からはリストラは行っていません。ただ、仕事の仕組みの転換を図るなかで、そのやり方についてこられなかったのでしょう。3年〜5年で社員は自ら退職していきました。
─ 現在の経営状況の様子はいかがですか
利益率は25%、毎年20%成長しています。
利益率は25%あります。今日、製造業の利益率は5%程度、10%あれば凄いと言われる状況にあってこの数字は異例だと思います。さらに引き合いも増えていて毎年20%成長を実現していて順調です。プラスチック製品は様々な分野があり車以外の販路の拡大も取り組んでいます。ただ、品質と値段だけではすぐに受注には結びつかないことも分かりました。大手企業さんは下請けを守らなければいけない社会的責任も負っているからです。簡単に取引先を変えられないようです。今は、まったく別の事業を立ち上げているところです。
─ 具体的にどんな工夫をされたのですか
ひとつの仕事を分解し、チーム制にしました。
従来社員が1人で行っていた仕事を、A、B、Cの3つに分解して、それぞれを1人のパートさんが担当します。仕事を分解すると単純作業になり、1人がA+B+Cの仕事をするよりも、3人のチームで行うことで15%〜20%生産性があがります。1人でABC全てを担当するのは複雑で熟練が必要なこともあり、パートさんは「それは社員の仕事、パートだからできません」と敬遠しますが、それも避けられます。先のABCも、作業の負荷に差があれば、さらに分解します。つまり、これまで社員がしてきた仕事をパート従業員でもできるようにしたという側面もあります。これは一例で、他にも、お金をかけなくてよいところはかけない、かけるべきところはかけるように、様々な経費の見直しを図りながら、現在の利益率が出せる仕組みをつくりました。
─ 仕事の仕方そのものを変えたのですね、できた秘訣はなんだったのでしょうか
現状を分析しロジックに考えて提案する力。
ツルタ電気は父の創業で、現場は技術畑の人が担っていました。製造業の世界では、「1人組み立て」といってはじめから終わりまで1人が責任を担うという常識がありました。そこからなかなか離れられなかったものを大きく変えることができたのは、私が経営コンサルティング、仕組み作りの提案の経験があったことが大きいと思います。経営コンサルティングには、相手が何を望んでいるか、何が経営課題なのかを見極めて、解決方法を提案する力が必要です。現状を分析し、ロジックで考えて、改善方法を提案する。自社のことも、取引先に対しても通用する強みだと思います。
─ 社風について教えて下さい
家庭が1番になる会社作りをモットーにしています。
これから先、どんどん人材確保が難しい時代になっていきます。第一に考えたのが、地域の女性が働きやすい環境でした。
弊社では、家庭が1番になる会社作りを、社員全員に呼びかけ、本気で取り組んでいます。子どもが急に熱が出たとき、授業参観などの学校の催事への参加など常に家庭優先で早退や休みを取ることができます。先ほどの仕事を分解してチーム制にしたことも生きています。1人が休んだ場合にでもチームの仲間が穴を埋められるからです。お互いに声をかけあい協力しあって仕事をするムードができています。勤務時間の体系も9時〜17時しかなかったものも、今では6つの時間枠を用意してパートさんの都合に合った勤務時間を選べます。高齢者の場合には完全自由出勤になっています。
他に、家族についての相談窓口の設置、家計の相談対応、介護レンタル機器の支援、自転車保険の加入制度などがあります。
パート従業員であっても、大企業正社員並みの福利厚生制度をしっかり用意しています。「いつまでも安心して長く働きたい」と思われる環境を作ることは企業にとって重要な要素のひとつだと考えています。地域から選ばれる会社づくりが働き方改革のあるべき姿ではないでしょうか。
─ 社員は1人と伺いましたが、採用についてはどのように考えてますか
ロジックで分析し、ロジックで考え、プレゼンできる人。
いろいろな事業を展開してくためにも、新卒採用も検討しています。希望があればインターンも積極的に引き受けたいです。
実は私の息子は現在、大学3回生です。息子は私の提案でカナダとイギリスの高校に留学しました。海外留学を提案したのは、日本人としての常識を剥奪したかったからです。日本人はできない理由づくりをするけれど、外国人はできる理由を考える。お金の価値観、時間の価値観、それぞれの国でいいものがある。それらを肌で感じて欲しいと願ったからです。「自分がしたいことはこれから見つけたらいい。でも、興味あることもないことも、どういう仕組みなのかロジックで見てロジックで考えられるように」と伝えました。日本の大学生の印象を聞くと「勉強しかできない」と返ってきました。
現実を分析ができるようになったら、目的目標が明確になります。目的目標が明確になれば、次ぎに戦略が立てられます。そしてそれを人に説得力を持ったプレゼンができるようになる。それが生きる力になる。できない理由ではなくできる理由づくりを学ぶことが大切です。
これら全てができるのは難しいとしても、世の中の様々な事に、どうなっているのか興味を向けてその仕組みがどうなっているか考える力。できれば、人と違う経験と視点で、自分の意見を論理的に説明できる力を持った人がいいですね。
─ 最後に若い人たちにメッセージをお願いします。
憧れの人が集まる場所に行こう。
こんな人になりたいなぁと思ったら、そういう人たちが集まる場所に行くといいです。1回ではなく、例えばそこでアルバイトをする。そこに集まる人たちの立ち居振る舞い、話し方や話題、そうしたものに接することで、なりたい人に近づくことができると思います。憧れを現実に変えられると思います。
インタビューを終えて
様々な質問にしてスラスラと明快に答えが返ってくる。そんな鶴田社長の徹底的に考え抜き実践してきた自信と凄みに、正直、私自身を振り返らずにいられませんでした。そしてその答えには驚きの連続でもありました。誰もが実現したいと思ってもなかなかできない事を実現していました。学生には若いうちに、是非ともと出会って欲しいと思います。きっと世の中の見る目を大きく変えてくれるでしょう。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏