Vol.13 島根大学生活協同組合
島根大学生活協同組合
- 社員の特徴を表すキーワード:苦しい状況でも明るく協力的
- 会社のビジョンを表すキーワード:学び合いの輪を広げる、成長の機会を提供する
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:前向きにチャレンジ、常に考え自ら提案、学生が好き
専務理事 栗山 保夫 氏
プロフィール
1985年広島大学法学部第二部卒業。大学3回生からアルバイトをしていた広島大学生協に入協。その後、大学生協京都事業連合、大学生協中国・四国事業連合、岡山大学生協、鳥取大学生協を経て2013年6月より島根大学生協に。島根県出身。
大学生活協同組合(以下、大学生協)は、食堂や購買など日常的に利用される身近な組織です。一方で、株式会社とは異なり、学生や教職員が組合員として大学生協の構成員であり利用者でもあるという協同組合です。つまり、組合員の生活を支える組織として存在し、生活の安全安心を支える共済・保険や毎日の食事をサポートするミールプラン、学びを支援する課外講座など幅広い事業活動を行っています。今回は大学生協の一つである島根大学生協の栗山専務に、大学生協の取り組みについて詳しくお話を伺いました。
─ 島根大学生協の事業内容について教えて下さい。
組合員である学生の「食・学び・住生活」をサポートしています。
食と学びと住生活の支援事業が三本柱です。具体的には島根大学の福利厚生施設の運営があります。施設とは学生にはお馴染みの食堂、書籍や文具などを販売するショップのことです。次に学生の学びと成長の支援ですが、1回生に向けに「学びと体験・出発(たびだち)講座」と「英語・コミュニケーション講座」を、3回生向けには公務員試験対策講座を開講しています。他に、新学期は新入生サポートセンターを開設して新入生向けにお部屋探しや新生活準備のサポートをしています。住まいについては賃貸物件の管理事業も2010年から行っていて、1300室程の学生向けマンションを扱っています。
─ 幅広いですね。もう少し教えてください。
毎日安心して食事が食べられるミールプランが自慢です。
他には、大学生協ではミールプランという毎日安心して食堂を利用できるサービスがあります。学生証にミールカードの機能がついていてレジのリーダーにかざすだけで食堂を利用できるサービスです。料金はまとめて先払いでいただいていますので、一日の上限利用金額は決まっていますが、安価にしかも毎日栄養バランスを考えながらしっかりと食事を摂ることができます。アルバイト料が入るまではお金がないから、調理パンやおにぎりしか食べられないといった心配がなくなります。各大学生協で様々なミールカードのプランを用意しているのですが、一年間の安心プランと自分の生活スタイルに合わせられる便利プランの両方のプラン用意しているのは、島根大学生協だけではないかと思います。ミールプランの利用額に応じたポイント特典もつく仕組みです。
─ 学びの事業について教えてください。
卒業する時に、「よぉ〜し、活躍してやるぞ!」という元気な島大生の姿を見たいのです。
新入生向けに「学びと体験・出発講座」を立ち上げて5年目になります。1回生が、2回生、3回生と経験を積み上げ、社会に旅立つ時には「生協の学びの事業に関わって良かった」と思ってもらえるような取り組みにしようと力を入れています。学び事業担当の職員と「島大マジックを起こそう!」とよく話をするのですが、島根大学(以下、島大)の学生たちに「この大学に進学して本当に良かった」と思ってもらいたいのです。それは、島大には、センター入試で得点が取れなかったなどの理由で不本意に入学した学生が少なくないという事情もあります。そういった学生たちに、大学生活スタートの場面で、この学び事業を通じて、友人を見つけたり、尊敬できる本気でがんばっている先輩と出会うことができたり、取り組みに参加することで充実した大学生活、将来に繋がる経験の場になればという想いで取り組んでいます。卒業の時には学生たちの「よし、これから社会で活躍するぞ!」と元気な姿が楽しみなのです。
─ とても熱い気持ちが伝わってきました。もう少し詳しく伺って良いですか。
他者に貢献することの喜びを感じ、自ら動ける人材を育む仕組みです。
「学びと体験・出発講座」は、新入生に対して上回生が講座運営スタッフとして活躍する仕組みです。講座を受けた新入生の中から、次の年には講座の運営スタップとして活躍したいと自然に手が上がってきます。それは、受講生一人ひとりが1年間の講座の中で成長実感を持つことができたことの証だと思いますし、先輩スタッフの親切心、教えることへの情熱やがんばりに感動し「自分もあんな風になりたい」と思ったのだと思います。
ここからさらに新入生サポートスタッフとして活躍してくれる学生、生協の取り組みに共感して生協の理事や監事になる学生までもいます。そうした貢献意欲、成長意欲を持った学生が出てきて生協の事業そのものを支えてくれています。その意味で「学びと体験・出発講座」を皮切りとする学びの事業は、大学生協の事業基盤にまで発展してきたと言えるかもしれません。
「学びと体験・出発講座」は損益の視点から見れば他の事業に見劣りするのですが、そもそも大学生協の存在意義に照らした時に非常に価値のある取り組みとして捉えています。職員にもそれを伝えています。この事業をよく理解し、学生たちを支え引っ張ってくれている担当職員には心から感謝しています。
この事業は、他者、そして社会に貢献することに喜びを見出し、労苦を惜しまずに自ら動ける人材を育んでいるのです。活動を通して本人自身も成長を実感し、自信を持つようになります。こんなに貴い取り組みがあるでしょうか。
─ ビジョンについて教えて頂けますか。
「島大に入って良かった」と思える学びの輪を広げていくこと。
大学生協というのは、組合員によって構成されており、組合員が「加入し、利用し、参加する」組織です。参加の一つに生命共済など、皆で助け合いの輪を広げようという活動がありますが、これから一番大切にしたい取り組みが、皆で学び合いの輪を広げようという活動です。学び合いの輪の中で、多くの学生たちがいろいろな事を学び、体験して成長し社会に巣立っていく場を提供していくことに力を入れたいと考えています。ビジョンと言えるか分かりませんが、それが島大生協のミッションに間違いありません。先の話の繰り返しかもしれませんが、「島大に入って良かった」と思える場をどんどん広げていきたいのです。
─ 社風といいますか、島大生協の風土はいかがですか。
苦しい状況にあっても頑張れる、お互いに協力的な雰囲気です。
私は基本的に職員に対して怒りません。職員には得手不得手でいえば、得手を活かして頑張って欲しいと思っています。そういう想いが自然と伝わっているのだと思うのですが、皆で仲良く協力して仕事をする風土があると受け止めています。正直なところ累積赤字があり返済している状況です。決して事業状況は明るいとは言えないし待遇面でも苦労をかけている面もあります。それにも関わらず、そのことも理解した上で不平を口にすることもなく、いつも明るい雰囲気でお互い協力的に仕事をしてくれていると感じます。
─ 最後に求める人材像について教えてください。
前向きに考えてチャレンジできる人。学生と共に成長することを喜びにできる人。
ありきたりですが、前向きに考えてチャレンジできる人。空元気ではなくて、心から本当に前向きに物事を捉えて明るく元気に頑張れる学生を期待します。学力よりは、そういったところがまずは大切だと考えています。普段、職員には「どうしましょうか?」ではなく、「こういう風にしたいのですが、どうでしょうか」という言い方をして欲しいと要望しています。その点では、現状で良いのか?と普段からよく考え発信し、一緒にチャレンジしていきたいし、常に、学生にとって大事なものは何か考えて、もっと良い環境やサービスを提案してくれる人。一方で、職場はひとり舞台ではありません。仕事には協力が必要です。性格の合う合わないがあったとしても、どの職員とでも丁寧なコミュニケーションを意識して取ってくれる人が欲しいです。
最後に加えますと、生協は一般企業とは違います。成果に対して給与で応えることができません。給与にモチベーションを求めるのではなく、仕事に対して価値や意味を見出し、そこにやりがいを感じてくれる方、学生と向き合うことや学生と共に仕事をすることが好きな方を求めます。
インタビューを終えて
種明かしのようですが島根大学生協は私の会社(株)EDUCEのお客様であり、栗山専務との付き合いは20年近い長い付き合いです。昔から変わらぬ暖かい人柄と情熱に、あらためて心打たれる想いがしました。青臭い言い方かもしれませんが、栗山専務の学生の成長を見守り支える事業への熱い想いと生協職員に対する暖かく優しい眼差しを、これからもしっかり応援することが私の使命だと思い直しました。共に夢を語り、夢の実現に向けて共に成長できる仲間がいることは本当にうれしいことです。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏