Vol.14 湯~モアグループ
湯~モアグループ
- 社員の特徴を表すキーワード:絶え間なくアイデアを出す、4つのユーモアでもっと楽しく
- 会社のビジョンを表すキーワード:湯~モア、YOUモア、友モア、遊モア
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:ビジョンへの共感、経営者マインド、自立的
代表取締役 清水 武 氏
プロフィール
1995年明治大学経営学部を卒業後、大手鉄道会社へ就職。その後フリーでのイベント運営ディレクターなどの経験を経て、2002年天然ラジウム温泉太山寺なでしこの湯の立ち上げに参加、2010年株式会社湯~モアリゾート、2011年、株式会社なでしこの湯、2017年湯~モア電鉄と次々と会社を設立し代表を務める。公益財団法人ひょうご産業活性化センターから「成長期待企業」に選定される。
湯~モアリゾート株式会社、湯~モア電鉄株式会社、株式会社なでしこの湯を擁する湯~モアグループ、事業内容は、国際地域観光事業、温泉・ホテル事業、経営サポート事業と幅広く展開しています。グループを取り纏める清水社長に事業に対する想いをじっくり伺いました。
─ 社長として幅広い事業を展開されていますが、今にいたる経緯を伺えますか。
フリーター時代に銭湯で手にした安藤百福さんの本が忘れられません。
私自身、かつてお湯で救われたことが今に繋がっています。新卒で就職した大手の鉄道会社で実績も出して順調だったのですが、5年程して、自分から提案していく仕事、仕組みから作っていく仕事にチャレンジしたいと思いまして退職しました。まずは事業資金を貯めようとストックオプション制度のあるベンチャー企業に転職したのですが、毎日100件の飛び込み営業をするような仕事で、入社した社員の1%しか残らない会社だったのです。高校・大学と体育会系の部活で鍛えられ相当打たれ強いと自負していたのですが、会社の雰囲気も悪くとても続けられず退社しました。
ところが、入社数ヶ月で退社してしまったことが応えたのか、次の就職に気持ちがなかなか向かわない。工事現場の日雇い労働で日当6,500円程度の日銭を稼いで、なんとか毎日をしのぐようなフリーター生活でした。どん底のような日々で唯一の救いが、雨の日の図書館と仕事終わりの銭湯でした。先の見えない生活で銭湯は本当に癒しと憩いの場でした。ある時、脱衣場に置かれていた本に気づきます。チキンラーメンを発明した安藤百福さんの本でした。気が変になったのではと評されながらも48歳の時にチキンラーメンを発明するのですが、今や日清食品のチキンラーメンやカップヌードルを知らない人はいません。本を通して将来経営者を目指していた自分を取り戻しながら、これからの時代、健康や癒しとしてお湯は大切なものになるのではないかと、バイトもしながら企業への事業提案をしはじめるようになりました。その中で縁があって「なでしこの湯」の立ち上げスタッフとして入社することになったわけです。
─ いろいろご苦労があったのですね。事業内容について教えて下さい。
湯~モア、YOUモア、友モア、遊モアの4つのユーモアの実現がビジョンです。
単にホテル事業や温泉事業をしている会社のように見られますが、ここに至る経緯でお話したようにお湯に対する想いがあります。先の見えない時代だからこそ、世の中を面白くしたい。お湯をきっかけに、こころとからだをリフレッシュできる場を提供したいという想いです。その想いを形にしようと「湯へのこだわり:湯~モア」「健康・癒し:YOUモア」「コミュニケーション:友モア」「地域エンターテイメント:遊モア」の4つのユーモアをビジョンとして掲げています。
詳しくは弊社のサイトに紹介していますが、このビジョンを形にしていく具体的な手段として、湯~モアリゾート、湯~モア電鉄、なでしこの湯の3つの会社があり、お客様との接点となるホテルや温泉があるわけです。その中の一つ、湯~モア鉄道は、実は鉄道ではなくて、「電子」鉄道をもじったもので、お客様や市民が参加できる交流イベントを企画し地域や業界と連携して開催しています。参加者に楽しんでいただけるエンターテイメントの場としてユーモア溢れる企画をたくさん形にしてゆきたいと考えて活動しています。
お客様から、ホテルでしょ、温泉でしょと見られるのではなくて、4つのユーモアから産まれたサービスやイベントの独自性、付加価値を認められ評価されるようになりたいのです。
─ とてもユニークなビジョンですね。競合が多い業界だと思います。強みはなんでしょうか。
新しい商品・サービス、独自なイベントを次々と他社に先駆けて提供し続けます。
ホテル業界は外資の参入もあり競合過多の時代です。どこも価格競争に巻き込まれています。さらに、インターネットによって情報はすぐに伝わるので良いサービスはすぐに真似されてしまいます。
我々が取っている戦術は、ビジョンに共感できる人を育てて、絶え間なくアイデアを発信し、次々と新しい商品・サービスを提供していくことです。結果の数字を見て改善するなど次の手を打ちます。他に真似されても構いません。他社に先行してどんどん新しいことをこれでもかと連打していく。
単にホテルや温泉というハードを売りにしているのではなく、四つのユーモアというビジョンに基づいた様々な商品・サービス、イベントなどのソフトが売りです。施設は古くとも中身はどんどん新しいことを展開している。地域の独自性を活かした、オリジナリティ溢れるイベントやサービスを提供しています。真似しても追いつけない、真似しようと思っても真似できないというのが強みです。
この強みは社風にも繋がっています。お互いの意見を尊重して、新しいアイデアやチャレンジがどんどん沸いて出てくるような職場づくり、チームづくりをしています。従業員の一人ひとりが、自分の知識や能力を磨き発揮することに前向きになる「学習型組織」を目指しています。
─ どんな人材を求めていますか。
ビジョンへの共感と経営者マインドを持っていて欲しいです。
おかげさまで、求人を出すと多数の応募をいただけるようになりました。採用を見極める上で大切にしているのは、会社のビジョンに共感してくれるかどうかと、経営者マインドを持っているかどうかです。会社のビジョンに共感がなければ同じ方向を向くことができません。どこに向かって頑張れば良いのか、なんのために仕事をしているのか同じ思いで仕事をしたいと思います。経営者マインドというのは、端的には自立的であるということです。ビジョンの実現に向けて、自ら考えて行動できる、情報発信できるということです。ポジティブ発想で、成長意欲を持って取り組む上でも自立的であることは基礎ではないでしょうか。経営者マインドを持っていれば、ハンドリングできる仕事の幅はどんどん広げられる仕事環境です。
就職で失敗した人もウエルカムです。私自身、若い時の紆余曲折が今の自分の支えにもなっています。名前で会社を選んで入ったけど、こんなはずじゃなかったという方は多いと思います。自分はもっとこんな風にしたかった。こんなことがしたかった。そういう想いがある人は大歓迎ですし、やりがいのある仕事が沢山あります。一緒にチャレンジしましょうと背中をたたきたいですね。
─ 若い人たちへのメッセージありますか。
意にそぐわないことがあっても踏ん張り所かも。目の前のことに一生懸命になろう。
働き方は様々です。私自身もサラリーマン、フリーター、個人事業主、経営者と様々な働き方をしてきました。ボロボロの時も沢山経験しています。フリーターの時は本当に歯を食いしばる想いでした。皆さんもこれから様々な紆余曲折あると思います。
最近殊更に思うのですが、死ぬときに後悔したくはない。そのためにも、今、目の前のことを一生懸命にするってとても大切ではないかと思います。人目を気にして生きるのはもったいないです。これをやりたいって思ったことにはどんどんチャレンジしてください。
将来の理想の自分に向かって真っ直ぐに失敗せずに進みたいという想いを持っている方は多いと思います。自己実現の本を参考にしているかもしれません。ただ、どんなに「分かってほしい、認めてほしい、自分を選んでほしい」と思っても敵わないことも多いのが現実です。自分ができると思っていても、他人からみたらそうでもないこともあります。
意にそぐわないことがあった場合、希望通りの就職や仕事ができなかった場合でも、他人から引き出されて能力が開花することや、やりたい仕事ではない仕事を一生懸命やった末に、自分では予想もしなかった能力が開花するということもたくさんあります。若いというのはまだまだ未熟で視野も狭く、社会のほんの一部しか知らないし、自分の持っている能力もその一部しか知らない発展途上ということです。今持っている希望が敵わないといって腐ったり、あきらめたりしないで、踏ん張ることも必要な時期があると思ってください。
─ 最後に座右の銘がありましたら教えて下さい。
面白きこともなき世を面白く
幕末の志士、高杉晋作の時世の句で、弊社の経営理念として掲げている言葉でもあります。長引く不景気、格差拡大、少子高齢化など将来に対する不安が大きい現代社会ですが、こんな時代だからこそ発想の転換が必要ではないでしょうか。ものの考え方や見方次第で、つまらないものも面白くなったりします。事業を通じて、人の元気を引き出すきっかけを提供していきたいと思います。
インタビューを終えて
事業への想いを熱く語る清水社長の姿勢が印象的でした。そして、経営者として共感することがとても多く、清水社長の飾らない率直な言葉かけに応じて私もつい話が弾んでしまいました。話もユニークで、例えばエンターテイメントという言葉が出れば、エンタメ、縁貯め、円貯めと発想を広げて盛り上がるという具合。一緒に話をしていると、つい楽しくなってワクワクしてきてしまう。学生に紹介したい社長がまた1人増えました。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏