Vol.18 株式会社5コーポレーション
株式会社5コーポレーション
- 社員の特徴を表すキーワード:子供たちの将来の幸せを真剣に考える、切磋琢磨、前向き
- 会社のビジョンを表すキーワード:21世紀を生き抜く力を育む、子育ての悩みや不安に応える
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:誰かのために役に立とうとする貢献心
代表取締役 田中 良典 氏
プロフィール
立命館大学文学部卒業後、大手家庭教師派遣会社に勤務。2001年福岡で家庭教師派遣の会社を共同設立。2008年、広島で週5日通塾できる毎日個別塾「5-Days」を創業(10年に法人化)。11年には広島初の民間学童保育「LOVE-KIDS」を立ち上げる。現在「5-Days」は関西圏を中心に全国へ展開している。
株式会社5コーポレーションは2008年広島で「21世紀を生き抜く力を育む」教育を経営理念に掲げて開業された個別学習塾です。現在は広島のみならず、福岡、三重、愛媛、岡山、香川などの関西圏を中心に、その数は130教室を超えて全国に拡大中です。田中社長に、会社の事業ビジョン、教育事業にかけるの想いについて、さらに、これから求められる教育とは何か、大学入試改革によって何が変わるのか具体的に話を伺いました。
─ 塾には他にも有名所が沢山あります。御社の特徴について教えて下さい。
「5-days」の名の通り、毎日勉強することを大切にしています。
大学生のころから家庭教師の派遣の仕事に関わっていました。そのころからいつも、どうすれば子どもたちのやる気を引き出せるのか、どうすれば成績が上げられるのか考えていました。苦手な子は単に勉強をしていないだけではないか、勉強の量を増やせば良いのではないかと考えて、「毎日でも見てあげるからおいで」という「5-days」に辿り着きました。「5-days」は、学習塾の名前であり「月曜から金曜日の間は毎日勉強しよう」という基本コンセプトを表しています。毎日学校帰りに気軽に通える場にすることで、学習習慣を身につけることが大切だと考えています。身につけば、自分1人でも勉強に取り組めるようになります。会社名もこの「5-days」を運営する会社として分かりやすく「5」を入れた「5コーポレーション」としました。
─ 5コーポレーションが目指す教育とは何でしょうか。
「21世紀を生き抜く力を育む」ことが経営理念です。
今は豊かで、平和で安全な世の中です。子供たちも行こう思えば入れる高校や大学は必ずあります。会社も選ばなければ職に就けます。気に入らなければ転職もできます。ただそんな中、なんとなく生きている人たちがほとんどではないでしょうか。なんとなく生きて30過ぎたある時ふと「自分は、こんな人生でいいだろうか?」と思ったらどうでしょう。もしもその時、家族がいて住宅ローンがあったら、もはや身動きが取れなくなっているかもしれません。後悔する人生になってしまうかもしれません。だとすれば、もっと速く自分の人生について真剣に考えるきっかけが必要ではないかと考えます。
時の流れに任せるのではなく、周囲に流されるのでもなく、目標を持って努力しようという意識を持つことや、嫌だったけれど先生とがんばって何かを乗り越えたという達成感を感じられたかどうかは人生にとってとても大きいことです。その経験があるかないかは社会に出た時に大きな差になると思います。1回でもそういう経験を子ども時に経験させませんか?と保護者向けのチラシでは強くアピールしています。その反響はとても大きいです。
「5-days」では、学習塾にある「○○高校、○○大学、○○名合格!」といった表現はあまりしていません。これまでの受験産業とはまったく違う考え方で、子育てに悩んだり不安を感じている保護者の方の気持ちに応えようとしています。
─ 保護者の意識も変わってきたということでしょうか。
今の親世代は、偏差値教育について懐疑的で、不安を抱えています。
大学に至るまでに教育でできることは何だろうか、教科教育ばかりやってそれで何に繋がるのか、学力だけではダメではないかなど、教育の本質について今の親世代はかなり切実に考えていると感じています。その背景には、良い高校出て良い大学に入れば、良い会社に入れるよ、そうすれば収入も担保されて人生安泰だよと言われて育てられたのに、大学を出るころはバブル崩壊後の就職氷河期、まさかの有名企業も倒産する時代で就職もままならなかったという方が多かったことがあると思います。その時になって親から「あなたの好きなように生きていいよ」と言われても、もはや途方にくれるしか無かった方も少なくないのではないでしょうか。ですから、今の保護者は、積極的に「あの高校、あの大学に入れば大丈夫だから、今頑張って勉強しなさい」ということは、自分の子には口が裂けても言えないわけです。偏差値が大切だと答える親は以前には9割以上でしたが、今は6割程度です。結果的に、どういう教育、どういうしつけ、どういう考え方をしていけば良いのか考えて、悩み、不安を抱えている親は多いのです。
だから私たちは、こういう教育はいかがですか?という提案をしていて、今後ますます求められていく可能性は大きいと考えています。
─ これからの教育はどう変わるのでしょうか。
大学に入学する学びへの動機や将来社会に出てどう活躍したいのかの展望が問われます。
大学入試制度改革によって2020年から大学の入学試験の方法が大きく変わります。これまでの学歴偏重主義を改めよう、世の中で求められる能力と学校で開発される能力のギャップを埋めようという取り組みだと捉えています。
現在、どの大学もアドミッションポリシーを掲げています。こんな学生を募集していますという入学者受け入れの方針です。加えて、学生に対してどんな学びを提供し、どんな人材に育てて世の中送り出すのか明言しています。「センター試験」に代わる「大学入学共通テスト」では、マークシート式だけでなく記述式問題が出され、思考力、判断力、表現力が問われるようになります。特に重要な点は、試験の総得点ではなく各大学のアドミッションポリシーに基づいて必要な情報だけをセンターから各大学に提供するようになるという点です。これまでの入試対策では、そのほとんどが試験の総合点を高くする方法が取られていましたが通用しなくなります。さらに2024年からはパソコンで試験を受ける仕組みに代える予定もあります。問題の正解、不正解に応じて次の出題内容が変わる仕組みも検討されています。そうなると受験者全員が違う問題を解くことになります。
このような大学入試制度改革によって高校の教育内容も高校入試も、中学校の教育内容もドミノ式に変わっていきます。そうなれば、民間の塾も変わらざるを得ません。これまでの受験対策は全く機能しない時代になるでしょう。
結論を言えば、個々の学生に、なんでこの大学に入りたいのですか?入って何を学びたいのですか?学んだことを将来社会に出てどのように活かしたいのですか?ということが問われるということです。単純に言えば、就活で求められることが大学入試に求められるようになると考えています。
─ それでは社風について教えてください。
子供たちの将来の幸せを想い、社員同士で意見をぶつけ合いながら切磋琢磨しています。
拘束時間が長いというイメージがあるかと思いますが、勤務時間は休憩を挟んだ午後1時から10時までとなっていて遅くとも10時30分ぐらいには退社している様子です。子供たちが塾に来るまでの1時から4時の準備と、4時から10時の教える時間と仕事の区切りがあり、その間中、子供たちの将来の幸せを社員一人ひとりが考えながら仕事をしています。また、仕事は個人だけではなく縦横の関係もあって、リーダーもいて、それぞれのいろいろな考え方をぶつけ合いながらさらに良い教育を目指していて雰囲気も良いです。
一方で、早く帰ろうと言っても子供たちのことを考えたら準備をしっかりしておきたいという気持ちはとても強く、残業してしまう傾向も否めません。ただ、社員のそういう教え子を思う気持ちはないがしろにはしたくないと考えています。
若い世代は将来に対して明るい夢が持ちにくい社会的状況ですが、私たち社員も20代〜30代の子育て世代が中心で、経営層もとても若いのが特徴です。だからこそ今現に起こっている社会の変化、保護者の気持ちを真に受け止め応えられる土壌があり、ますます拡大発展していけると前向きです。
─ どんな人材を求めていますか。
消費者マインドで文句を言うのでは無く、相手にどんな貢献ができるか考えられる人。
子供たちは皆、分け隔て無く同様に無限の可能性を持っていると考えています。そして、その持っている可能性や能力を開花してあげることが私たちの使命だと捉えています。まずはそのことを理解していて欲しいと思います。合う人ということで言えば、子どもが好き、一定の学力があって、負けず嫌いといった素地が必要でしょう。理想を言えば、グッと迫るものが感じられる位に積極的な人が欲しい人のですが、なかなか出会えないなぁと感じています。
よくコミュニケーション能力と言いますが、特に相手を察することができる人を大切にしたいと思います。常々感じるのですが、勉強ができて賢くても、自分のことだけしか考えられないというのは困ります。相手があっての仕事です。社会性とも言いますが、相手が求めているものが何なのかに対して常に配慮できる人であって欲しいです。ある本で、現代の多くの若者が、消費者マインドを内面化してしまっていると書いてありました。消費者であれば、サービスの提供者に対して文句を言えます。「なんでこんな分かりにくい授業するんだ」ってクレームすれば良い。ところが、世の中に出たら立場が逆転します。相手に対して自分に何ができるか、どんな貢献ができるかを考えられなくはなりません。
学生に社会人とはどんな存在かと聞くと、責任が重くなるといったネガティブなイメージを持っていて不安が多きことが分かります。しかし実は、自分以外の誰かのために役立てればそれでいいんです。シンプルです。何で役に立てるかそれだけです。
インタビューを終えて
受験対策、偏差値教育、知識詰め込み、親のエゴなど学習塾に対して持っていたネガティブなイメージが払拭されたインタビューになりました。「21世紀を生き抜く力を育む」という理念にも大いに共感したし、田中社長の大学入試改革の本質理解、今の子育て世代の心情を汲み取り、それに応えようとする取り組みのお話にとても納得しました。どこの大学を出たかということよりも、何のためにどんな学びを求め、どんな経験を積み、どんなスキルを身につけて、社会にどう貢献したいのか、一人ひとりが自分のビジョンを問われる時代になってきていることをひしひしと感じました。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏