Vol.19 久松自動車販売株式会社
久松自動車販売株式会社
http://www.hisamatsujihan.co.jp
- 社員の特徴を表すキーワード:くだらないことでも本気になる、強い想いを持つ
- 会社のビジョンを表すキーワード:東証二部上場、社員と家族が誇れる会社
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:自分で気づく、自分の魅力を咲かせる
代表取締役 久松 孝治 氏
プロフィール
大阪学院大学経営学部卒業。大手の損害保険会社での勤務を経て、久松自動車販売株式会社に入社する。2013年に代表取締役社長に就任、経営手腕を存分に発揮し前年比150%成長を続けている。自動車事業、物流事業をトータルに展開、現在上場を見据え、ホールディングス化やM&Aを積極的に進めている。
久松自動車販売株式会社は大阪に本社を置き、自動車の販売や整備、自動車保険の取扱いなど自動車に関わる事業を幅広く行っている会社です。社長就任後、毎年のように前年比150%の成長を実現してきた久松社長は、グループ会社のトランスポートアトミック株式会社(運送業)の代表取締役も務めていらっしゃいます。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの経営手腕を発揮し続ける久松社長に、会社のビジョン、経営にかける想い、人材についての考えなど幅広くお伺いしました。
─ 成長目覚ましい会社と聞いて参りました。そのご様子からお伺いして良いでしょうか。
東証二部上場を視野に、ホールディングス化します。
現在グループ会社は2社ですが、今年、ホールディングス(持ち株会社)の立ち上げやM&Aなどで全6社になる予定です。売上は久松自動車販売だけでも、私が代表に就任した2013年に約6億だった年商は2018年には34億に拡大、毎年ほぼ150%成長を続けてきています。2021年には、グループ連結で年商120億、経常利益5億を目指しているところです。
出店については、昨年末東京支店、今年に入って名古屋、埼玉と営業所を立て続けに開設してきました。もうすぐ静岡にも拠点を開設します。埼玉から大阪まで、拠点間を2時間で繋ぐ運送が可能になります。さらに拠点を増やしていく予定もあります。拠点を増やすことで、運送ドライバーの労働環境をさらに改善できます。
─ 運送ドライバーの労働環境は厳しいとよく耳にします。どんな会社を目指していますか。
一生の間ずっとお世話になったと社員に実感していただける会社にしたい。
長距離運転による過労の問題以外にもいろいろ問題があります。一般に、ドライバーの賃金は歩合制で、月給が29万の時もあれば39万の時もあります。月によって10万も差があると家計が安定しませんからご家族が大変です。20代でも60代でもこの事情は変わりません。奥さんの不安はつきません。お子さんの出産や進学など、ライフステージによって生活にかかるお金もだんだん増えていきます。また、仕事には体力がいります。60才を過ぎると体力的に難しくなるし、出来なくなった時につぶしの効くスキルが身につきにくい仕事です。
弊社では、安心してドライバーの仕事ができるように年功給を導入し、20才から50才まではだんだん給料が上がっていくようにしています。51才になったら管理職に、60才からは査定課でドライバーの評価や教育の仕事に携わっていただく体制を用意しています。入社時に、定年までの収入見通しを立てられるように生涯賃金が分かるシステムも開発しました。定年退職する時に、一生の間ずっとこの会社にお世話になったと実感して欲しいという想いです。
─ 社員のご家族のことまで考えていらっしゃるのですね。
はい、社員とそのご家族が誇りに思える会社を目指しています。
弊社の一番の特徴は、社員を一番に考えているところです。分かりやすい例ですと、社員にはご家族説明会を実施しています。その日は、社員とご家族の皆さんを社長室に招いて面談をします。奥様からは、会社や日頃の仕事について直接質問いただき、それにお応えしています。面談の最後には社長席にお子さんを座わらせて皆で記念撮影をします。トラックドライバーは、子供から見て「パパ、かっこいい」って思える仕事です。お子さんをパパの乗っているトラックに乗せてあげると大喜びです。お父さんも会社を自慢できるしご家族も安心できる機会にしています。
また、地元へ寄付も積極的にしています。例えば本社のある羽曳野市は自然や歴史が豊かな街で、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録を目指しています。自然や史跡の写真を弊社のトラックにボディペイントし、全国を走らせることで羽曳野市のPRに一役かっています。他にも、地元の神社に軽トラックを奉納したり、小学校に寄付をしたりするなど、これまで皆さんにお世話になったことへの恩返しをしています。このような取り組みは、家族の皆さんが、お父さんの会社に誇りを持つ一つのきっかけになると考えています。
─ 社員への期待も熱いのではないでしょうか。社風など伺えますか。
会社はどんなことも本気になって取り組み、成長する場所だと思います。
以前は、自分が学生だったら絶対に就職先に選ばないような会社でした。社員が誇れる会社にしたい、夢を持てる会社にしたい、そのために他の誰よりも実績を上げようと、ほとんど休みも取らずにがむしゃらに働いた20代でした。認められて社長に就任し、今ようやく上場が目の前に見えてきました。会社は私のものではないと考えています。上場すればそれがさらに明確になります。将来、私を解任して代表になるような、私以上の人材が社内で育ってくれたら本望です。ですから社員には、会社は箱だと説明しています。気に入らないところがあれば、どんどん変えていこう。箱を使って何ができるか考えて主体的に仕事しよう。持っている能力じゃない、他の誰よりもこの箱をこうしたいという想いが強い人が最終的に社長になる。そんな話をして発破をかけています。
一方で、会社の急成長、急展開もあって管理職をはじめ社員の気持ちにゆとりがなくなって雰囲気は怖くなりがちです。キリキリするのはよくありません。そこで、くだらないことを全力でやるイベントを時々実施しています。例えば、ペヤングのソース焼きそばGIGAMAX、3つ食べきる早食い選手権を開催したことがあります。そもそも無茶な企画で大失敗、食べきれる社員はいませんでした。革靴で50m走選手権は大いに盛り上がりました。本当にバカバカしいことを本気になってしかも就業時間内に実施する。それを許す空気、気持ちがほぐれて笑顔が自然に出るような会社の雰囲気が大切だと考えています。
─ 求める人材像についてはいかがでしょうか。
社員は育てます。学歴は問いません。
実は求める人材像はありません。この箱を気に入って、ここにいたいと思ってくれればそれで良いと思います。
これは持論ですが、会社は教育産業であり、社会を生きる術、社会の常識や人との接し方などを学ぶ場所であり、会社はそれを教えていく必要があると考えています。これはこうしなさいという短絡な押しつけはしません。自分で気づき、自分の魅力を咲かせられる場所であるべきです。
実際に、ヤンチャして高校を中退、就職しても目も当てられないくらい転職を重ねた末に弊社に応募してきた子がいました。会って一目で面白いと感じて採用しました。現在、昇進を重ねて会社の要として活躍しています。ヤンチャでちょっと人生踏み外してしまったような経験のある社員は他にもいますし、世の中には少なくないでしょう。実は、上場企業を目指す理由には、若い時に失敗しても、学歴が無くても、弊社に入ったら上場企業の役員になれるチャンスがある、そういう夢を持てる会社にしたいという想いがあります。ですから学歴も気にしません。以前は悪かった社員の定着率も今は98%です。社員が自分の居場所と感じ、やりがいを持って仕事に取り組んでいる証だと感じています。
社員に対しては日頃から、仕事は着地点から逆算して考えることを意識づけしています。何がゴールか、いつまでにするのか、では、何を優先すべきなのか問いかけます。着地点を意識して仕事に取り組めば、そこに向かって真っ直ぐに進むことができます。我々は何を社会から求められていてそのために何をするべきなのか常に意識すること、失敗には素直に向きあい正直に伝え謝ること、仕事上大切にするべき様々な姿勢を折に触れて問いかけたり伝えたりしています。
─ 最後に学生へのエールをお願いします。
皆さんは自分の宝の地図を持っています。宝に向かって日々前に歩もう。
誰でも宝の地図を持っています。宝の在処を見つけ、今いる場所を確認し、線で繋げれば最短距離を歩むことができます。自分だけの最高の宝を手に入れてください。力があるから成功するのではない、誰よりも強く想う人が成功するのです。そのことを心に秘めて、今日を全力で生きてください。
インタビューを終えて
冒頭から最後の最後まで、社員本人と社員の家族の幸せを本気になって考えていることが伝わってくる久松社長のお話でした。上場の展望を語る言葉にも浮ついた様子はなく具体的で、その目線の先には社員の誇りがありました。理想論としての社員の幸せや誇りを語る経営者は多いのですが、それを具体化し着実に実現している会社は数少ないと感じています。学生の皆さんには企業規模の大小に囚われず、その真贋をしっかり見極めて欲しいです。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏