Vol.26 株式会社ケーイーシー

株式会社ケーイーシー

https://www.kec.gr.jp

  • 社風を表すキーワード: 学び合い・高め合い・育み合い
  • ビジョンを表すキーワード: エデュテイメント(教育×エンターテイメント)・教育ITベンチャー
  • 求める人物像を表すキーワード:病的な好奇心・寝られなくなるほど夢中・人が好き

代表取締役 小椋 義則 氏
プロフィール
株式会社毎日コミュニケーションズ(現・株式会社マイナビ)にて中小企業の経営者に採用・教育・組織風土分析などのコンサルティング活動を行ったのち、2007年に父親が経営する株式会社ケーイーシーに入社。新卒採用活動を軸においた組織改革・理念の浸透に携わり、2012年、先代社長の死去に伴って代表取締役に就任。

株式会社ケーイーシーは奈良県内に35以上の教室を持つ学習塾であり、地元小・中学生、高校生の学び舎である。目先の進学ではなく、「10年先・20年先にも続く自信を育てる」「人間大事の教育」を事業理念として掲げ、単なる理念の標榜に終わらない驚異的な実績は、塾業界を超えて国内の多くの企業から評価され注目されている。今回は小椋社長に、そうした実績や評価を裏打ちする経営や社風づくりなど幅広くじっくりお話を伺いました。

─ 学習塾ということですが、事業理念や御社の独自性について教えていただけますか。

 現在、日本中から年間100社以上の見学をいただいています。

弊社には創業40年以上の歴史があります。創業時からの理念「人間大事の教育」は今も変わりません。7年前に代表に就任してから、この理念を徹底的に浸透させていくという改革をしてきました。理念を意識するだけでなく、理念を実現するためのサービス設計、仕組み化を図ってきました。
その具体的な成果として、奈良県は学習塾の増加率が日本一という土地柄や少子化という逆風が吹く中、5年で2倍の業績を残しました。この業績は、従業員モチベーション調査全国4位(全業種中)、働きがいのある会社調査全国ランクイン、関西経営品質賞など様々な方面から社会的評価をいただきました。今では、同業だけでなく、大手電機メーカーや大手ホテル、経営コンサル会社など様々な業界、全国各地から年間100社以上の企業様が見学に訪れて下さいます。お陰様でブランド力もつき、弊社の持つこうした成長ノウハウを経営コンサル会社には真似できない形でサービス提供するに至っています。
独自性と聞かれますと、「人間大事の教育」を愚直に徹底し、社員全員で形にしてきたということに尽きるのではないでしょうか。

─ 素晴らしいですね、経営上のこだわりや工夫についてもう少し具体的に聞かせてください。

 原理原則のステップを地道にする。共有されることで学び合う組織になる。

学習塾というと、一般に塾の数を増やすことで事業拡大を図るのですが、弊社は塾の数を増やすのでなく、サービスの品質を今よりもさらに高めるために何ができるかを考える方向性で取り組んできました。
私が業績を上げ成果を出すために大切にしているマネジメントのステップがあります。1考え方を共有する、2やる気をひきあげる、3やりかたを共有する、4やりかたの徹底実施と進捗管理、5達成感を感じられる評価表彰の5つのステップです。この5つのステップを原理原則として視覚化し、メンバーで共有し根づかせるというものです。やる気を引き出すだけではダメです。気分にはムラがありますし、やる気があっても具体的なやりかたが分からないと空回りしてしまいます。マネジメントとして、メンバーと向き合い、行動を見守り、できた時には評価表彰する、できない時には相談に乗る。これを積み重ねていくことで確実に成果が出てきます。
例えば、全社員に加えて学生アルバイトや非常勤スタッフも集まるイベントに「キックオフミーティング」があります。この時、会社の目指す方向性の共有に加えて、メンバーの成果に対する表彰を盛大に行っています。他にも社員合宿など様々な場面で、共有と評価する機会があり、メンバーそれぞれが自分でなんとなくやっていたことを全体で共有しています。このような取り組みがあって、自然に1人ひとりが、経営に参画しているという実感の持てる会社になり、メンバーの自律と学び合いの文化として実現しています。お互いに励まし合い、高め合ってみんなで幸せになろうっていう雰囲気が社風になっていると実感しています。

─ 私が社員の方の雰囲気も良いと感じたのは、そんな学び合いや高め合いの文化があるからですね。

 ここは「10年・20年先にも続く自信が育つ」土壌だと確信しています。

はい、文化をいかにつくるのかというのはとても大切にしてきていることで、文化になれば自然と広がります。それを支えている個々の小さな取り組みの1つですが、社員1人ひとりがG(ゴール)とPDCAを確認できる「ロードマップ」を用意し、スケジュールやタスクだけでなく自分のロードマップを毎日セルフチェックしています。ゴールを常に意識することで、失敗や挫折をそのままにせず改善しようという前向きな姿勢につながっています。とてもストイックな取り組みのようですが、癖として身につくと成果や成長が自分で実感できるためメンバーは楽しんでつけています。
実は、G-PDCAを確認できるロードマップは、生徒用も用意してあり生徒の自律ツールとして活用されています。先日ですが、生徒からこの塾で学べたことの歓喜の声を直接聞くことができて感動したことがありました。社員スタッフの学び合い・高め合いの空気が塾の生徒にも伝わり、それが彼らの自信ややる気を育んでいることは間違いありません。10年先、20年先にも息づく生徒の自信を育む場を、職場や教室の雰囲気づくりからしていると考えています。美味しい野菜を育てようとしたらまずは土からということだと思います。

─ それはこれからが楽しみですかね。ビジョンについて教えていただけますか。

 教育にエンターテイメントやITを掛け合わせた世界一の教育機関を目指しています。

「エデュテイメント(教育×エンターテイメント)で、世界で一番通いたい教育機関を創る」というビジョンがあります。具体的にどうやったらエデュテイメントが実現できるのか社員皆が常日頃から考えています。実例としては、ハロウィンのイベントがあります。講師も生徒も全員が仮装し、出し物を用意したり、教室で踊ったりと、徹底的に楽しみます。勉強では英単語1つ覚えるにも、面白く楽しく取り組めるようなDVDを作るなども行っています。
これらは苦しいことでも工夫次第で、楽しく前向きに取り組めるという経験です。こうした経験の積み重ねは将来必ず生きてきます。目の前の大きな課題がどんなに苦しく険しいものでも、どうしたら乗り越えられるか、どうしたら楽しく前向きに取り組めるか考えられる力につながります。
また、教育×IT(AI)で教育ITベンチャーに変貌しようとしています。属人的だった教育もITやAIにできることは任せて、先生自身は生徒達の学びをもっと楽しくするサービスやモチベーションを上げる関わりに力を注げられる体制を作り、5年後には、“教育ITベンチャー”と呼ばれる会社を目指しています。エンジニアに対しては1ランク上の給与にするなどの仕組みの具体化を図っていますし、私自身も深センやシリコンバレーに2年くらい留学して学び直しするという覚悟を社員に伝えています。
今の延長線上で考えれば12年後の年商100億は間違いないと見通していますが、それではダメだと、あえて1000億円を目指そうと目標を掲げました。そのために自分たちがどう変化成長しなければならないか、今までとは全く違う発想が求められます。すでにベトナムやフィリピンにも進出していますが、さらなる世界展開も視野にいれながら実現していきたいと思います。

─ ケーイーシーで求める人材像について教えていただけますか。

 世界で一番レベルの高い教育サービスを提供したいという想いに共感できる方です。

就職サイトには、私が考えた原稿をそのまま掲載しています。そこに私たちが求める人物に響くメッセージを意識して作成しています。それだけ採用には真剣です。ですから、弊社の求める人物像に合っていれば必ず共感できるはずです。単にお金目的であれば、ここじゃないなって分かるはずです。
それをあえて言葉にすれば、「病的な好奇心を持っている」「思い立ったら寝られなくなるくらい夢中になって取り組める」「人が大好き」の3つです。この3つが中心で、例えばエンジニアではあれば論理性やもっと深く掘り下げる力、現場の先生であれば人と真っ直ぐ向き合う力に重点が置かれるのだと思います。弊社の想いに共感した人たちが集まり、やりがいや達成感をもって活躍できるステージをどんどん産みだしていくことで、みんながハッピーになれると考えています。

─ 最後に学生へのエールをお願いします。

 自分がどんなことにやりがいを感じる人間なのかを知っておくことが大切です。

就職先をなんとなくフィーリングで選んでいる人が多いと思います。広告を見て楽しそうとか、有名で知っている会社ばかり回るような就活になっていないでしょうか。これではどうしても視野がせまくなりがちです。中には夢を持っていないとダメなんじゃないかと思っている人も多くいます。しかし、夢はいきなり見つけられるものではありません。
それよりも、これまでの自分の人生をていねいに振り返って、どういう生き方をしてきて、どんな場面でやりがいを感じたのか知っておくこと、そしてこんな生き方をしていきたいとか、こういうことを大事にして生きていきたいということを見極めた上で就職活動をして欲しいと思います。
それがあれば嘘のない正直な面接ができると思います。そうして選んだ会社であれば、働きながら、こんなことやったらもっと自分のやりたいことができるかもしれないという夢ができていくものです。

インタビューを終えて

 小椋社長の説明1つひとつに、私も教育事業に携わっていることもあって、共感と説得力を感じて終始感銘しまうという時間でした。私が曖昧にしか語れなかった事柄も、1つひとつ具体的に詳細に説明されることで私の学びの時間にもなりました。学び合い高め合う文化を形にすることの、地道な取り組みに敬服するとともに、何か一緒に産み出したいという想いにも駆られています。まずは深く感謝したいと思います。

発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏