Vol.27 株式会社ヒューマンレジリエンス
株式会社ヒューマンレジリエンス
- 社員の特徴を表すキーワード:お互いに本音が言えるオープンな関係
- 会社のビジョンを表すキーワード:組織や個⼈のレジリエンスを⾼める
- 入社して欲しい人に期待するキーワード:お客様のために役に立とうとする貢献心と責任感
常務取締役 中村 好⾂ ⽒
プロフィール
甲南大学卒業後、大手人材紹介会社に勤務。株式会社ベルキャット(訪問看護ステーションベルキャット)を設立、会社代表取締役であり、株式会社ヒューマンレジリエンスの常務取締役も務めている。精神保健福祉士でもあり、組織や個人に寄り添いながらレジリエンスを高めるサポートを仕事としている。
株式会社ヒューマンレジリエンスは大阪にあるEAP(従業員支援プログラム)のコンサルティング会社です。クライアント企業の従業員のメンタルヘルスを外部からサポートしています。今回は、中村常務に社名に使われているレジリエンスという聞き慣れない用語について教えていただきながら、実際の事業内容や事業を通じて実現したいこと、仕事をする上での心がけなどを伺いました。
─ 社名に使われているレジリエンスという言葉を最近よく聞きます。どんな意味が込められているのか教えて下さい。
組織や人のレジリエンスを高めたいという想いが込められています。
レジリエンスという言葉は、回復力や自己治癒力といった意味です。このレジリエンスは組織にも個人にも求められる時代です。昨今、政府が推進する「働き方改革」、経済のグローバル化などによる労働環境の急速な変化や複雑な人間関係が影響してハラスメント対策や社員のメンタルヘルスの管理が課題になっています。こうした難局を自分たちで乗り越えていける力を高めたい、レジリエンスを高めながら生産性をあげていける組織づくりに貢献したいという想いが、ヒューマンレジリエンスという社名に込められています。
─ 事業内容について教えていただけますか。
従業員のメンタルヘルスケアが主な事業です。
2015年から「労働安全衛生法」に基づき、労働者が50人以上の事業所には年に1回ストレスチェックを行うように義務づけられています。専門的にはEAP(従業員支援プログラム)といいます。弊社のような外部機関が関わることで、自分の悩みを社内の人に知られることなくメンタルヘルスの専門家に相談することができる仕組みです。
弊社には、臨床心理士、精神保険福祉士、キャリアコンサルティング技能士、メンタルヘルスマネジメントなどの資格を有するスタッフが、契約企業様のコンサルティングを担当しています。従業員の方との個人面談では、心身に不調がないかストレスなどを確認します。組織に対しては労務管理のチェックを行います。弊社にはストレスチェックや従業員満足度を測る独自のシステムがありますので、これを活用したメンタルヘルスケアの取り組みもしています。
他に、接遇マナー研修、電話対応研修、言葉遣いや敬語研修、褒めあう風土づくりなどの各種のビジネス研修やキャリアコンサルティグなどのサービスも行っています。幅広く組織づくり、人づくりを支援する会社だと理解してください。
─ 事業のこれからの発展性はいかがでしょうか。
働き方改革が進む中、ニーズはどんどん高まっています。
医療関係の取引先からサービスの提供をスタートさせていますが、現在は、他の業界からも相談が増えています。先日は、運送会社にうかがってきました。ブラックで当たり前と思われていた業界でも従業員に対する支援の認識が高まっていると感じています。
一方で、法律によって義務化されたストレスチェックですが、ただ実施しているだけという企業が多いのが実状だと感じております。チェックの結果を元にさらに安全で安心な職場環境づくりをしましょうと積極的に働きかけていくのが弊社の使命だと思います。
─ 今の仕事にいたる中村さんのこれまでの経緯をうかがっても良いですか。
大学時代はバンド活動に夢中で、紫や赤などの派手なロン毛頭をしていました。
転機は、3回生の秋に友達に誘われて京セラドームの合同説明会に参加したことでした。その時もまだロン毛頭にスーツでしたが、いくつかのブースを巡ると、名前は知らないけどすごいことやっている企業が一杯あることに気づかされたわけです。もしもこの企業がなければ服がない、食べ物がここに届いていない、そういう日常を支える無名の中小企業がたくさんあることが衝撃でした。無知を思い知らされた経験でした。バンドやめてこの広い世の中に飛び込んでみようと、美容室にすぐに行って就活をはじめました。企業の大人が学生に丁寧に接してくれる機会はこの時しかない、興味あるなし関係ない、広く知ってそこから絞ればいい、と考えて色々な企業説明会に足繁く通いました。
持ち前の積極性もあっていくつかの会社から内定を頂いたのですが、業界4番手の人材紹介会社への就職を決めました。決め手は資金力のある発展途上の会社だったからで、ここなら自分の実力を発揮し伸ばせると判断しました。ところが、天狗だった鼻がへし折られる想いの一年になりました。自分はできると思っていたし、3年5年の社員に負けないという気概でしたが大間違いでした。リーマンショック後の最中、会社も必死で、パワハラや生き方改革なんて縁遠い時代だったのもあるかもしれません。今でも忘れない先輩社員との会話があります。「おまえの給料はどこから出ているのか」と聞かれたので「会社から出ている」と答えました。返ってきた言葉は「アホか。それは顧客からだ」。この会社での経験で、お客様からサービスの対価をいただくことがどれほど大切なことなのか、どれほど責任が問われることなのか、肌で学ぶことができました。
もともと独立起業をしようと考えていたこともあり、若者支援のNPOで働く看護師さんとの出会いがあって、看護師の皆さんと訪問看護ステーションを設立しようということになりました。精神疾患の方をメインでサポートするために立ち上げた会社が株式会社ベルキャップです。
そこで出逢ったある患者さんは有名大学を卒業したのに、先生から言われた一言に傷ついてすっかり引きこもっていました。医療的なケアは看護師に任せ、私は一緒にハローワークに行き、求人探しや面接の練習や履歴書のチェックなどの支援をしました。その甲斐もあって大手のIT企業に就職、その後、転職も実現しています。転職先では主任を任され、現在チームをマネジメントする仕事をしています。引きこもっていた若者が、転職して月収50万を稼げるようになりました。今でも月に2回程お会いして、仕事の様子を聞かせていただいています。
このような人に寄り添い、励ましたりアドバイスしたりすることで、人が元気になっていく姿を見ることに喜び、人に役に立てているという喜びが、今の仕事に繋がっています。
─ それでは社風について教えてください。
本音で何でも言い合える信頼関係を大切にしています。
どんな会社ですかと聞かれると、家族のような会社ですと即答します。家族という言い方に誤解や抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんね。もう少し付け加えれば、互いに相手に対する気づかいはもちろんありますが、上下の垣根なく、本音ではっきり意見を言い合える関係を大切にしています。自分をさらけ出して生きていけるという会社でありたい思っています。
TwitterやLINEなとのITを使ったコミュニケーションを否定しませんが、対面で話して初めて相手の人となりが分かるのだと思います。弊社のサービスは人に対するサービスですからなおさらです。社内での対人コミュニケーションができなければ大問題です。社内で信頼関係を築けなくてクライアントとの信頼関係が築けるわけがありません。
─ 社員教育についてはどんなお考えですか。
実践主義なので、現場でのOJTとフィードバックを大切にしています。
営業ノウハウを机の上でどれほど真面目に勉強しても、研修でロープレを何回やったとしても、実際の現場は生き物です。都度都度の対応の仕方とかは変えていかなくはなりません。例えば、名刺交換のやりかたを何度も練習します。でも、実際にお客様の前で緊張しながらやってみないことには身につきません。当然、業務の合間に研修はしています。電話応対や名刺交換といったビジネスマナーは弊社の研修メニューとしてクライアントにサービスも提供していますからしっかり教えます。それでも弊社ではOJTを大切にしていて、営業同行には必ず隣に座って教えます。お客様に失礼があった時には、その場で丁寧に謝罪をした上で、営業の後すぐに、「ここはこうしなくちゃいけなかったよね」と丁寧にフィードバックしています。仕事は現場で実践的に学ぶというのが基本だと考えています。
─ 最後に学生にエールのメッセージをお願いします。
大人と会話しよう。自分の視野や世界が広がります。
普通の学生の対人関係と言えば、大学の友達、サークルの友達、バイト先の友達に限定されています。それは価値観が合って心地の良い関係ですが、自分の視野も世界も広がりません。私の場合、大学時代はバンド活動に夢中でした。ライブハウスに半年ぐらい通いつめて、マスターにメンバーの集め方を教わったり、ギターを探しているバンドを紹介したりしてもらいました。その中でたくさんの大人と触れあう機会にも恵まれ、自分の世界が広がったと実感しています。学生時代に、いろいろな大人の人に出会って欲しいし、いろいろな話を聞いて欲しい。大企業の社長だから敷居が高いとか、若手社員だからしょぼいとか先入観を持たずに関わると、皆さんそれぞれに自分の大切なエピソードを持っていて、惜しみなく話を聞かせてくれます。就職活動以外の場面で、大人と触れあうことで魅力のある大人になれるのでないかと思います。
インタビューを終えて
中村常務の経験については中学校まで遡ってうかがいました。高校はオーストラリアへの留学、日本人だからという理由での理不尽ないじめにあった話、大学時代のバンド活動、新卒で就職した人材紹介会社での苦労話の数々。その中に一貫して、一つひとつの出会いを大切にし人を信じて寄り添う姿勢が、過去から変わらず今の仕事に繋がっていることが感じられたインタビューでした。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏