Vol.30 京都橘学園生活協同組合

京都橘学園生活協同組合

https://www.tachibana-coop.jp

  • 専務の想いを表すキーワード:他人を誹謗中傷するような大人にはなって欲しくない
  • 事業のビジョンを表すキーワード: 大学生協という場は、お互い腹を割った話ができる場
  • 学生に期待するキーワード:自己中心的にならず、社会に対する広い視野と問題意識を

専務理事 友金 一 氏

大学生活協同組合(以下、大学生協)は、学生にとって食堂や購買など日常的に利用する身近な組織です。一方で、株式会社とは異なり、学生や教職員が組合員として大学生協の構成員であり利用者でもあるという自治組織です。組合員の生活を支える組織として存在し、生活の安全安心を支える共済・保険や毎日の食事をサポートするミールカード、学びを支援する教育サービスなど幅広い事業活動を行っています。今回は大学生協の一つである京都橘大学生協の友金専務に、大学生協での仕事のやりがいや意義、学生への想いについてお話を伺いました。

─ 大学生協のお仕事では、どんなやりがいを感じているか教えていただけますか。

単なるお店の経営ではなく、学生の学びと成長に関われる点です。

学生の時には大学生協の学生委員会をしていたこともあり、生協の職員さんに対してはただ単にお店の商売をしている人たちではなくて、学生の心に寄り添ってくれる人たちが働いている組織であると感じていました。学生である私の悩みにも耳を傾けて下さいました。卒業時には大学生協を選ぶことなく企業に就職したのですが、仕事の悩み事を学生時代にお世話になっていた大学生協の職員の方に相談したところ、大学生協の採用試験の受験を勧められて現在に至ります。
仕事では、事業をしっかり成り立たせるという現実と向き合う必要がありますが、一方で学生たちというのは打てば響く、学生のことを考えながら一生懸命取り組んでいれば、それを学生は必ず好意的に受けとめてくれます。またお互いに腹を割って話す事ができるというのが、お互いの学びや成長に繋がっていると実感しますし、大学生協における仕事のやりがいだと感じています。自分が働き出してからのことを振り返っても、学生からの感謝や応援の言葉が支えになっていて、仕事が辛い時も乗り越えられたことが思い出されます。この仕事をやっていて本当に良かったと感じています。

─ 学生に対する想いが伝わってきました。今コロナ禍がたいへんな状況ですが、これからについてどんなお考えをお持ちですか。

事業として、学生の成長をしっかりサポートしていきたいと考えています。

今後のところで言えば事業を持続していくという現実の厳しさがあります。コロナ禍で大きな痛手を受けていますし、大学も厳しい時代状況にさらされていますので、大学生協に向けられる視線もこれまでに増して厳しくなっていると感じます。そのような状況下でも学生たちとのコミュケーションで腹を割って話す事があるのですが、「なるほど君の言う事は判る。けどこういう視点も併せて考えてごらん」みたいな学生たちが大人の本音に触れることで、彼らの成長につながっているという実感があります。一般的なアルバイトであれば、バイト先で大人と本音で向き合うという場面はあまりないのではないかと思います。私たちの事業は、組合員の生活をサポートしているというばかりでなく、学生たちの成長にも貢献しているという自負があります。そうした点をしっかり意識して事業いと考えています。
実際に、そうした想いが伝わり、私が関わった学生の何人かが大学生協で働きたいと言ってくれています。とてもうれしいことです。欲張りな話ですが、卒業後も大学生協の発展に貢献してくれるといいですね。

─ 学生にどんな期待を寄せていますか。

自分のことを棚に上げて、他人を誹謗中傷するような大人にはなって欲しくない。

それほど深く考えられているか自信はありませんが、社会がより良くなっていくためには、こういう発想で物事を見て欲しいなぁという学生に対する想いや期待は自然と出てきます。それは、それほど難しいことではありません。特に昨今、自分のことを棚に上げて他人の揚げ足を取ったり、誹謗中傷するという大人が目立つようになったと感じます。そんな大人になって欲しくありません。相手の意見に耳を傾け、相手の意見のいいところと自分の意見を擦り合わせて建設的なやりとりができ、その行動を通して社会で活躍し、他者に貢献できる人になって欲しいなぁと思います。
私もこれまでを振り返ると、様々な人から声をかけていただき教えられ、支えられてきて今があると感じます。教えられながらも自分なりに勉強もしてきました。そんな私の経験や学びが学生の成長につなげられるかもしれないと感じた時には、積極的に伝えていきたいと思います。

─ なるほど、お話から社会に対する危機感のようなものを感じましたが、いかがですか。

自己中心的にならず他者を尊重し協働できる人が増えて欲しいと感じています。

私の気のせいかもしれませんが、端的にはガマンできない人が増えているのではないかという気がします。自分の思い通りならないことが受け入れられないのでしょうか。組織に属していれば、なにもかもが自分の思い通りにならないわけですから、相手を尊重したり、周囲と協調して行動できたりするということはとても大切だと思います。実際には、ネット社会が一般に広がり、存在してもこれまで可視化されなかった人が目立ってきただけかもしれません。でも、自分と意見の合わない人を悪者にして攻撃するというのは、自分の価値観は絶対で、相手が間違っていると信じて疑わないからできることなのだろうと思います。組織の中で働いている中で、自分の価値観ややり方とは違うことを理由に、相手を攻撃するような大人にはなって欲しくないです。

─ 最後に学生へのエールをお願いいたします。

自分の目指すゴールを意識し、それとともに社会に対する視野も広げていこう。

私は結果的に生協に拾って頂いたと思っています。そのことは幸運で今も十分に幸せですが、もしも今人生をやり直すならばあれしたい、これしたいって気持ちも正直あります。そうした想いから言いますと、就活を始めてから自分は何をしたいのか考えるのでは遅いよと伝えたいです。自分が社会の中で力を発揮し貢献できる大人になるために、大学生活の中で何を経験し身に付けるべきか早めに考えながら過ごして欲しいと思います。それが十分難しいことは承知していますが、本当に思います。
キャンパスのあちらこちらで学生が議論している姿が見られる大学もあればそうでないところもあります。身近なことから広く社会問題まで、自分は関係ないとか、テレビ画面の中の世界だと考えないで、自分はこう考えてこう動いていると主張できる学生もいます。彼らは社会問題を自分事として受け止める事ができているのでしょうか。そういう学生が増えることが、大学での学びや経験のレベルアップ、更には社会がより良くなっていくことに繋がるっていくのだろうと考えています。
とはいっても、実際に考えさせられる場面がないとなかなか考えませんよね。大学生協は、大きく社会を見据えた社会的課題を考える活動や環境活動、平和活動もしています。SDGsに関する課題を考え行動する事もその一つです。より良い社会作りに貢献する大学生の学びや成長にコミットする事も大学生協の存在意義や事業の本質の部分だと考えています。ですから、生協に関わってくれている学生には、そうした社会問題を考える問いかけをしたり、意見を聞いたりしていくことは大事なことかなぁと思います。
学生の成長につながるコミットをしてくれる職場職員集団であれたらいいなぁと期待しつつ、仕事そっちのけで学生とのおしゃべりが過ぎてもいけないなぁと、理想と現実の間で揺れ動きながら、本質を見失わずにこれからも大学生協の事業に取り組んでいきたいと思っています。

インタビューを終えて

友金専務から出てくる言葉の一つひとつは、終始落ち着いた丁寧な口調で美辞麗句を並べず、とても誠実さを感じさせるものでした。何事にも理想と現実があり、事業も人生も理想どおりにはいかない現実の厳しさがあります。一方で、理想のない事業というのは、羅針盤を持たない航海のようなものです。常に大切にして心がけなくてはいけないこと、見失ってはいけないものも一方であります。理念やビジョンは、事業組織だけでなく、学生の皆さんも心に秘めながら、この厳しい現実の中で立ち向かっていって欲しいと感じています。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏