Vol.31 大阪教育大学生活協同組合
大阪教育大学生活協同組合
- 専務の想いを表すキーワード:大学生協の存在意義をもっと形にしたい。知ってもらいたい
- 事業のビジョンを表すキーワード: 何かしたいことがあった時の相談窓口になりたい
- 学生に期待するキーワード:主体性と社会性を身につけて欲しい
専務理事 十川 仁宣 氏
大学生活協同組合(以下、大学生協)は、学生にとって食堂や購買など日常的に利用する身近な組織です。一方で、株式会社とは異なり、学生や教職員が組合員として大学生協の構成員であり利用者でもあるという自治組織です。組合員の生活を支える組織として存在し、生活の安全安心を支える共済・保険や毎日の食事をサポートするミールカード、学びを支援する教育サービスなど幅広い事業活動を行っています。今回は大学生協の一つである大阪教育大学生協の十川専務に、大学生協の取り組みとその想いについてお話を伺いました。
─ 事業をする中で感じている学生への想いから伺ってよろしいでしょうか。
主体性と社会性を身につけて欲しいと感じています。
大学での4年間は人生で1番成長できる期間だと思っています。だから、積極的、主体的に行動して欲しいと思っています。大学生協としてしっかりサポートしていくからとアピールしています。そして、学生には「大学生活はコース料理ではなくてバイキング料理だぞ」と喩えで説明しています。その意図ですが、コース料理ならば前菜からデザートまでウェイターが食事の進み具合を見ながら順番に運んできてくれます。ところがバイキングは違います。待っていても料理は運ばれてきません。自分で料理を取りに行き、並んでいる料理から自分で選んで食べなくてはなりません。うっかり料理を取り過ぎてお腹いっぱいで苦しいという結果が待っていることもあります。人によって好みも違えば、胃の大きさも違う。同じ時間で元が取れる人もいればそうでない人も出てきます。大学生活の4年間で、どれだけ動いて、どれだけ吸収できるかは本人次第です。だからこそ、主体的に行動して欲しいわけです。
一方で、大学生活は自由であると共に、大人への準備段階でもあります。自由に伴う責任、組織の中での社会性を身につけなくてはならない期間でもあります。好きなこと、やりたいことをやるだけでなく、社会性として、協調性や責任意識も育んで欲しいと考えています。いずれは就活で厳しく問われる点だと考えています。
─ 大学生活はバイキング料理、分かりやすい喩えで納得しました。事業の中にその想いはどのように活かされていますか。
生協の基本理念に「One For All、All For One」があります。
教職員や学生の皆さんは生協の組合員ですから、お互い仲間として大切にしましょう、支え合いましょうというのが事業活動の根本にあります。組合員の皆さんに知っておいて欲しい基本的なことがらです。
ですから、学生の皆さんのこんなことをしたいけれどできないかという相談には積極的にのっていますし、そうした学生の主体性を受け止め、できる限りのサポートができればと考えています。様々なサポート中でも、学生委員や講座の運営スタッフとして活躍することは、冒頭お話しました、主体性と社会性を磨く良い経験の場です。学びと経験の場であるとともに、大学には様々なコミュニティがありますから、その中心的な役割を担うのが、大学生協の学生委員や講座の運営スタッフであればとてもうれしいです。
─ 大学生協の存在意義には特別なものがあるということですね。もう少し詳しく伺って良いですか。
生協では学生の皆さんの学びや成長をサポートする事業をしています。
一般企業に比較して分かりにくさはありますね。大学生協というのは単なる売店ではないのです。生活協同組合ですから、組合員の生活を文化的に、経済的に支えるために存在しています。その中に、学生たちのキャリアアップの支援もあるという位置付けです。
例えば、パソコン講座の運営のスタッフとして活動すれば、アルバイト代をもらいながら人を教える経験を積むことができます。教師を目指す学生さんであれば、それを磨く機会として、生協職員を巻き込んでやりたいことを実現できる場です。これは学生だけではできませんよね。
大学生協の利用者は、利用者であると共に生協に出資している組合員でもあります。一般的には株主的立場にあるわけです。食堂にこんなメニューをおいて欲しいと要望することができます。中には、授業で学んだことを生かして、食堂の混雑回避のためにこんなことをしてみたいという提案が持ちかけられることもあります。そういう提案があったときには、とても主体的な学生だなと思いますし、協力してあげたいと思うわけです。理論と実践という言い方があります。机上の勉強だけではなくて、食堂や購買などを勉強の実験の場として活用することができます。席のレイアウトの工夫とか、食堂の利用の仕方の周知とかを実際に試してみることができます。ある研究室からは、学生とこういうことを考えたので試してみたいという話を教員の方からいただいたこともあります。
こうした取り組みは、生協のない大学ではできないことで、生協のあることの明らかなるアドバンテージではないでしょうか。組合員全員の特権ですから、もっと活用して欲しいですね。一方で、組合員からの要望でこうなりました、研究や実験にこんな形で協力していますって、もっと積極的にアピールもしていかなければいけませんね。
─ 一般企業とは違うことがよく分かりました。では、事業のビジョンについて聞かせてください。
何かしたいことが合ったときの相談の窓口になりたいです。
学生委員にせよ、講座スタッフにせよとても頑張っています。活動する中で、人前で堂々と分かりやすく話すことができるようになっているのが分かります。これまでの話もそうですが、折角良い活動しているのにも関わらず、こうした一連のことがまだまだ学内に知られていないというのは残念なことです。学内には○○実行委員会といった名称の様々な活動団体があります。そうした活動と学生委員や講座スタッフとの違いがあまり知られていないのが実状です。ですから知名度をアップしたいし、学生委員会の活動として取り組んで欲しいと希望しています。
一部の教職員からオープンキャンパスの時に協力を求められたりもします。生協の学生委員がいるから、オープンキャンバスが上手くいくんだ、新入生が安心して新生活をスタートできるんだ、というように広く認知され、生協が大学にとって必要でなくてはならない組織となれるようにがんばりたいと考えています。これは大それた考えではなくて、言い方を変えれば、何かあったら学生委員に相談しようという受け皿のような存在になりたいという想いです。クラブやサークルなどの学生団体が何かしたいとなった時に、まずは生協の学生委員会に相談してみようという流れなる。そうした学生の主体的な想いを、生協や大学が実現のためのサポートをするという形が自然になる。それがビジョンでしょうか。
─ 最後に改めて、学生へのエールのメッセージをお願いします。
大学生活は皆さんの主体性が試される場です。
最初にバイキングに喩えましたように、大学生活は皆さんの主体性が試される場です。大学生協は皆さんの経験とか成長に対して協力は惜しみません。
大学生協はこの大学に生協があって良かったねと思われるのが理想だと考えています。卒業する時に生協があったから僕たち成長できたね、生協で学生委員とか、講座スタッフとして活動することでいろいろ経験ができたし楽しかったねと言ってもらえるように、これからも頑張りますので、やりたいことをどんどん提案してください。
インタビューを終えて
十川専務のお話は、一貫して大学生協の存在意義に照らして実現を目指している理想の事業体は何かを見据えた内容だと受け止めました。だからこそ学生を支援するんだ、だからこそ学びと成長の場でなくてはならないんだという強い想いを感じました。ストレートに伝わってくるメッセージは、それだけで前向きな気持ちにもさせられるものです。それにしても、「大学生活はバイキング料理、だから主体性が求められる」という喩えにとても共感しました。
発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏