Vol.32 宇都宮大学消費生活協同組合

宇都宮大学消費生活協同組合

https://www.univcoop.jp/udai/index.html

  • 専務の想いを表すキーワード:食べることと学ぶことを支える。
  • 事業のビジョンを表すキーワード: 人間的に成長し豊かになっていくキャリア経験の場。
  • 学生に期待するキーワード:学生の気持ちに寄り添いながら、一緒に考えていきたい。

専務理事 樽井 豊 氏

大学生活協同組合(以下、大学生協)は、学生にとって食堂や購買など日常的に利用する身近な組織です。一方で、株式会社とは異なり、学生や教員が組合員として大学生協の構成員であり利用者でもあるという自治組織です。組合員の生活を支える組織として存在し、生活の安全安心を支える共済・保険や毎日の食事をサポートするミールカード、学びを支援する教育サービスなど幅広い事業活動を行っています。今回は大学生協の一つである宇都宮大学消費生活協同組合の樽井専務に、大学生協の取り組みとその想いについてお話を伺いました。

─ 事業についてビジョンや想いについて伺って良いですか。

学生の活躍を目の前に、学びの支援の事業の可能性を強く感じました。

宇都宮大学に着任して2年程経ちました。着任した当時、大学生協での学びの支援については、これから盛り上げていかなくてはいけないという流れがあり、実際に学生が運営をするビジョンナビゲーションセミナー(以下、ビジョンナビセミナー)を見て、やっぱりこの事業は重要だと確信したのを覚えています。
ビジョンナビセミナーは学生委員会のメンバーが中心になって、新入生を迎えて行うセミナーです。司会進行を務めている2人が本当に上手で、イキイキとやっている。話の仕方も流れの作り方も上手で、講師の先生の話に移る場面でも、スムーズに話に入っていけるように流れをつくっていたので、聞き手の集中力が途切れないのです。入りたての大学生に向けて、固くなることなく導入部を見事に演出していた印象的な場面でした。そういうことができてしまう学生委員会がすごいなと。とても私が大学生の時には考えられないような取り組みで、学びの事業、学生が成長する場やきっかけをつくる仕事はこれから大切だと実感しています。

─ キャリアPC講座も学生が主体で運営されはじめましたよね。

機が熟したタイミングでスタートできたという印象です。

キャリア関連の講座は、従来はビジョンナビセミナーのみで、学生のスタッフが運営するパソコン講座は初期セットアップのサポート講習程度でしたが、キャリアPC講座は運営も2年前に開始、それ以前から職員もキャリア支援やコーチングに関する資格取得も進めていたこともあり、学生スタッフとの連携もかみ合い、学びと成長の事業全体が軌道に乗りだしていると感じています。機が熟していたところでタイミング良く上手く回り出しているという印象です。学生委員会が中心となってビジョンナビセミナーや講座運営も上手に仕切ってくれるので、職員は上手にバックアップするような形です。

─ その様子を専務はどのように見られていますか。

表面的な技術でなく、人間的に磨かれる豊かになっていると感じます。

ビジョンナビセミナーやキャリアPC講座も、新入生サポートセンターが基本になっています。新入生はもちろんですが、保護者も1番不安な時期に、保護者同伴で来店された皆さんに、直接先輩が大学生活の様々なことに対して説明する場面になっています。そこが起点となって次へと繋がっていくと考えています。ここでは学生スタッフの人数も必要ですが、先輩学生一人一人の力量も問われます。ですから先輩の説明を聞いて安心感を持ってもらうために、スタッフは十分な準備をしています。生協の学生委員が中心となって、スタッフを育てています。新入生や保護者の方の相談に丁寧に説明できるトレーニングを計り、話し方や話す内容にスタッフによる食い違いが出ないように意思統一も十分にはかっています。その結果、学生スタッフのコミュニケーション力が磨かれます。このような地道な学生委員の取り組みがあって新入生サポートセンターが安定して機能しています。
PCキャリア講座の運営も、はじめは学生スタッフに不安がありました。しかし、自分たちで講座を準備し進めていく中で、ただ話術や話し方が上手くなっていくだけでなく、人間的な中身も豊かになっていると傍らで見守りながら強く感じているところです。そうした彼らの成長が大学生協の事業に生きているし、彼らの成長があるからこそサポートセンターも回っていくのだと思います。
今年はコロナ禍の影響で、例年であれば1番学生スタッフか活躍できる時に、活躍できませんでした。そればかりでなく、昨年までは売り手市場と言われた就職活動も、企業の採用がどんどん減り空前の就職難が待っているのではないかという不安が学生に広がっています。何が我々にできるか、学生の不安に寄り添い話し合う中で、学生たちにとって頼りになる存在として生協の価値をつくりたいと思いますし、そういう役割を担っているのだとも考えています。

─ コロナ禍による逆風もありますが、事業について今どんなことを考えていらっしゃいますか。

食べることと学ぶことを支えるのが大学生協の事業の基軸だと考えています。

大学生協の中心的な事業に食堂がありまして、とても重要だと認識しています。以前のような60歳で定年という時代は終わったから特にそう感じます。今の大学生は70歳、75歳まで現役で仕事ができるような、卒業してから50年はしっかり働ける身体をつくっておく、あるいは食と健康を意識できるようになっておく必要が大学時代にはあると思うからです。
高校までは、栄養バランスを考えた食事を家庭で用意してくれていたと思います。大学に進学し、下宿生であれば自分でやらなければならないのですが、1人暮らしを始めると、仕送りやバイト代のほとんどは、今はスマホの通信料、交遊費、中にはゲームだとか、そうした使途の優先順位が高くなって、食費が削られる傾向があります。1日1食で済ませてしまう学生も少なからずいます。
ですから、大学生協の1番は、食堂事業を通して学生の身体をしっかり作ること守ることだと考えてきました。人の身体は、食べたもの飲んだもので作られています。大学生協の学食は栄養バランスも考えられて、食育にも取り組んでいます。大学生協の「学食パス」を利用すれば、食事の履歴や栄養価の情報を確かめられます。
今コロナ禍の状況で、学生たちに食堂でごはんを出せないというのは、生協の1番の使命と最大の強味をもぎ取られた感じでとても悔しい思いです。しかしながら、学ぶことと食べることを支えるのが大学生協の事業の基軸であることは間違いないと考えています。学生が全員もどってくるという状況はまだ先かもしれませんが、少人数のゼミや授業から少しずつ対面の授業が始まっています。今感じている悔しさを噛みしめながら、これから何ができるかこれまで以上に考えていかなければいけません。踏ん張り所です。

─ ありがとうございました。最後に学生へのエールのメッセージお願いします。

学生寄り添い、話合いながらこれからを一緒に考えていこうという想いです。

学生委員や学生スタッフのメンバーには、学生がイキイキしていないと大学もイキイキしないから、皆さんには中心的になって活躍して欲しいと常々発破をかけています。ただ、頭ではわかってもどう行動すれば良いか分からないというのも感じています。だから寄り添い、一緒に考えています。
今期、入校禁止で大学に入れない状況にあって学生委員会はオンラインで実施してきています。平時の通りにはできなくても、何ができるだろかと話合い、WEB上での新入生交流会を実現しました。オープンキャンパスも高校生向けにWEBで情報発信できないかと取り組んでいます。学生から発案があって形にしてきました。ただ、このような取り組みは対面と違って、相手の反応や結果がすぐには見えません。そんな学生たちをめげないように勇気づけながら、話合いを重ねています。このような状況の中、うれしいことに新入生から十数人が学生委員会に入ってきてくれました。もちろんWEBで見て入りたいと応募してくれた学生がいるわけです。これからも、自分たちのやってきたことを信じてやって欲しいと思う出来事でした。大学生協として何ができるかを考える時も、学生の皆さんが何を考え感じているのか、不安や期待などを拾い上げ、話合いを重ねるなかで道が見えてくると信じています。学生にとって1番の相談相手になれるように頑張ってまいります。

インタビューを終えて

「食べること」と「学ぶこと」を支えるのが大学生協という樽井専務の言葉が印象的でした。人生100年時代が到来し、これからますますライフスタイル、ワークスタイルが多様化していくと予想されています。「食べること」による、身体づくりや健康はその大前提であり生活の基盤でもある。そしてそれは大学生活における食生活環境が大きく影響するという認識に、大学生協の食堂事業の重要性を見直しました。もう一つの「学ぶこと」もその重要性を深く認識されていました。お声かけいただき、この春から私の会社が学生スタッフの研修に関わっております。弊社としてしっかり専務の想いをバックサポートしてゆきたいと考えています。

発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏